こんにちは。むーです。
米国株投資のバイブルとされる「株式投資の未来」。
この本はジェレミー・シーゲル(以下、シーゲル)という有名なアメリカの金融経済学の教授によって執筆されました。
結論から言うと、こんな内容の事を書いています。
- 永続する会社(グローバル大企業)が、株主に本当の利益をもたらす。
- 株価の伸びと、株による収益は、実はイコールではない。
この記事では、この本の要約と、レビューをしていきます。
株式投資の未来の要約
成長の罠?高配当株VS成長株
GAFAMに代表される「今をときめく成長企業」とエネルギー産業などの「今後の劇的な成長が見込めない成熟企業」があった場合、皆さんはどちらに投資をしますか?
恐らく大半の方が、今後成長が見込まれる「成長株」に投資したい!と思われるのではないでしょうか。
しかしながら、高成長株は皆が欲しがるため高い値段で取引されやすく、結果としてリターンのパフォーマンスが上げにくい、とシーゲルは説きます。
シーゲルはこれを「成長の罠」と呼び、安定して収益を上げられる企業の配当こそが株主にもたらされる真の利益であると説いています。
それを裏付けるために、1950年に当時の成長筆頭株である「インターナショナル・ビジネス・マシーンズ(IBM)」と「スタンダード・オイル(現在のエクソン・モービル)」にそれぞれ1,000ドルを投資し、得られる配当を全て再投資し続けたら2003年にいくらになるか?という検証をしています。
その結果がこちら。
銘柄 | 1950年 | 2003年 |
IBM | 1,000ドル | 約96万ドル |
スタンダード・オイル | 1,000ドル | 約126万ドル |
意外な事に、スタンダード・オイルの方が30万ドルほどトータルリターンが高い結果となりました。
この結果の要因は配当再投資にあり、スタンダード・オイルは50年後、保有株数が当初の約15倍になっているのに対し、IBMは約3倍でした。
高配当株は割安に放置されやすく、配当で保有株を積み増すことで株価上昇によるリターンを加速させたため、スタンダード・オイルの方がパフォーマンスが良かった、という理屈です。
これについて、シーゲルは以下のように言及しています。
1871年から2003年にかけて、インフレ調整ベースで、株式の累積リターンの97%は、配当再投資が生み出してきた。キャピタルゲインが生み出した部分は3%にすぎない。
株式投資の未来 第9章より引用
必ずしも「企業の成長=株主へのリターン」とは成りえないとという事ですね。
全ての高配当株に適用できる話ではなく、一種の逆張り投資のような要素もありますので、銘柄選択が最重要だと感じました。本書の第10章では、配当再投資に適する銘柄選定について過去の実績と合わせて解説がありますので要チェックです。
配当は下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル
配当は下落相場があればこそ本領発揮します。
具体的には、株式投資の未来のフィリップモリスでの実例を見るのが分かりやすいです。
1992年から2003年の株価は20$〜60$の間で上がったり下がったりしています。
しかし、その一方で配当はというと、1992年から2003年まで一度も減配せず、それどころかほとんどの年で増配をしていたのです。
配当再投資をした投資家は株価下落時により多くの株数を買うことができ、保有株数が倍以上に増えました。これが「下落相場のプロテクター」です。
そして、大きく株価が戻した2003年末には値上がりの恩恵が大きくS&P500を上回るリターンを得ることができました。これが「リターンのアクセル」です。
株価の下落が大きいほど、配当再投資による保有株数増加で値下がり損失を回復するのは速いため、「暴落はチャンス」と言われるんですね。
積み立てた資産は誰が買う?
この本を読んで一番ハッとさせられたのは、自分が積み立ててきた資産を一体誰が買うのかという事です。
例えば、S&P500指数のインデックスETFを積み立てて定年を迎えるとします。積み立ててきた資産は現金化しなければ使えません。
しかしながら、先進国は軒並み少子高齢化が進む中で、同じように資産を売りたい退職者はごまんといるはずです。
需要と供給の関係から積み上げてきた資産の価値がどんどん下がるのでは…とも思えてきます。
ところが、シーゲルは途上国の急成長が持続することを前提に、中国やインドなどの発展途上国の若い労働者が富裕国の高齢化する人口を支えると予想しています。
この辺りの話は、今まで考えたことも無かったので刺激を受けました。
シーゲルの一貫性-株式の実質リターンは6.5~7.0%
本書の中で、過去200年間の米国の株式、長期国債、短期国債、金、ドルを対象にインフレ調整後のトータルリターンを比較しています。
詳しくは本書で確認頂きたいのですが、1801年に1ドル投資した結果は以下のようになりました。(本書抜粋)
- 株:$597,485
- 長期国債:$1,072
- 短期国債:$301
- 金:$1.39
- ドル:$0.07
株式のリターンが圧倒的ですね。
株式の平均リターンはどの時期にも一貫して6.5~7.0%のレンジを維持しており、過去200年間は、購買力ベースでみて投資家の財産が平均して10年で倍のペースで増え続けたことになります。
世界大恐慌の時期も第二次世界大戦直後にも株式のリターンは一貫して6.5~7.0%のレンジを維持してきたそうです。
この先の未来も同様に推移すると過程するならば、米国インデックスに投資すると平均7%のリターンが得られるはず、という事ですね。
株式投資の未来のレビュー
良かった点
根拠(データ)を持って説明している
「永続する企業が利益をもたらす」という主張に対する根拠に対して首尾貫徹バックテストや具体例などの数字で持って説明しているため、説得力があります。
いまいちな点
情報が古い
株式投資の未来はリーマンショック前の2005年に日本で発売されており、情報が古い点はデメリットです。
例えば本書でIT業界を代表する銘柄、成長株として紹介されているIBMも今では高配当株の仲間入りをしています。
とはいえ、配当再投資の効果は昔から変わっておらず、たばこや石油セクターは変わらず高配当株が多いですし、今でも役に立つ内容ばかりです。
どの時代にも適用できるかが疑問
本の内容は普遍的なことを言っている様ですが、本書では2003年時点の株価を使っているため、検証する時代によっては違った結果になるのではないかと思いました。
複数の時代における検証結果があれば、配当再投資戦略に優位性がある事の説得力が増したのでは?と思います。
まとめ
私自身は今はS&P500インデックス1本で投資していますが、配当戦略自体には非常に魅力を感じています。情報が古いのがネックではありますが、未読の方は本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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