こんにちは!むーです。
今回は、藤野英人著『投資家が「お金」よりも大切にしていること』を読んで得られた学びを整理してシェアします。
本書は、投資家が意思決定の背後で大切にしている価値観や哲学に焦点を当てています。短期的な利益や市場のノイズに振り回されず、長期的な視点で資産形成や企業選びを行うための考え方を学べる一冊です。
この記事では、本書の内容をもとに、投資家が重視する価値観や意思決定のポイントを整理し、個人投資家が実践に活かせる考え方を解説します。読者自身の投資方針や資産形成の軸を見直す参考として読んでいただけます。
書籍の概要
【書籍名】投資家が「お金」よりも大切にしていること
【著者名】藤野英人
【出版社】講談社
【出版日】2013/2/26
【目 次】
第1章 日本人は、お金が大好きで、ハゲタカで、不真面目
第2章 日本をダメにする「清貧の思想」
第3章 人は、ただ生きているだけで価値がある
第4章 世の中に「虚業」なんてひとつもない
第5章 あなたは、自分の人生をかけて社会に投資している、ひとりの「投資家」だ
本書の要点
著者は投資信託「ひふみ」シリーズ最高投資責任者であり、様々な投資に関する著作を執筆しているファンドマネージャー藤野英人氏。
お金は「目的」ではなく「手段」である
本書の狙いは、「投資はダーティ、お金儲けは悪い、お金のことを考えるのは卑しい」と社会通念から刷り込まれている人の認識を真逆に塗り変えることにあり、本書では「真面目」というワードが繰り返し使われています。
本書では、お金そのものをゴールとせず、お金を通じて何を実現したいかを明確にすることが大切だと説かれています。著者はお金を「人生の選択肢を広げる道具」と位置づけ、「お金儲け=悪」という古い価値観を見直すよう促しています。
「真面目とは、本気であり、真剣であり、誠実であること。“本質とは何か”ということをしっかり考えること。日本人のお金に対する態度や行動は、不真面目であるとしか言いようがない。何も考えていないし、考えているとしても自分のことしか考えていないから。
投資は「価値の循環」を意識する
本書では、投資を「金銭的リターンを求める手段」と捉えるのではなく、「社会や未来への投資」として捉える姿勢が紹介されています。良い企業や事業を支えることで、その企業や社会全体に価値を還元し、それが結果として投資家自身に利益として返ってくるという、株価の上昇以上の意味を見出す投資観を述べています。
例えば、タンス預金のように動かないお金は、価値を生むエネルギーを失っている状態であり、社会を動かす力にはならないと述べています。お金を「眠らせる」のではなく、「未来をつくるために使う」ことが投資の本質だという考え方です。
また本書では、投資とは「お金を持つ一部の人だけが行う特別な行為ではない」という点にも触れています。例えば、赤ちゃんのように直接投資をしていない人でも、社会の中で消費や存在そのものが価値を生み出しており、経済の循環を支える一員だと強調します。社会全体が互いに作用し合う構造の中で、誰もが投資の輪に含まれているという視点を説明しています。
消費者として消費行動に責任を持つ
本書では、消費や投資を通じて社会に対して責任を持つことの重要性も説かれています。安さだけを追う消費が企業の低賃金化を招き、悪循環を生むことがあります。そのため、価値あるものやサービス、企業には適正な対価を払うという認識が、投資や消費の両方で求められるとしています。
この視点は、単にお金を増やすことを目的とする投資を越え、どのような社会を支えるか、どのような未来を望むかを考える投資につながります。
個人的にハッとさせられた一文を引用して紹介します。
自分たちの社会を幸せにするのかどうかは、大部分は私たちの行動による。消費者の責任。まず、消費者である自分が変わる。
社会貢献とは、新しい何かをつくりだすことだけではなく、消費することによっても成し遂げられるものです。ですから、私たちが働くことにも大きな価値があるし、私たちが消費することにも同じくらい大きな価値があります。そういう意味で、「人は、ただ生きているだけで価値がある」のです。
書評・感想
本書を読み進める中で、特に心に残ったのは「経済とは他人との関わりであり、無関係な人は一人もいない」という指摘でした。私たちは普段、消費者か生産者かという区分で物事を捉えがちですが、実際には誰もが両方の側面を持ちながら社会に影響を与え続けています。
だからこそ、お金をどう使い、どこに流し、どの未来に託すのかという姿勢が問われているのだと強く感じました。
また、投資という行為の本質が「お金を増やすこと」ではなく、「良い循環をつくること」にあるのだと腑に落ちました。お金そのものは道具にすぎず、そこに価値を吹き込むのは私たちの意思や選択です。
私は普段、個別株を財務指標やテクニカル分析を基準に売買判断していますが、今後はそれに加えて「その会社を応援したいと思えるか」「自分の投資がより良い社会づくりに寄与するか」といった観点も取り入れるべきだと感じました。こうした視点を持つことで、著者が述べる「こころの形成」、つまり投資を通じて自分の価値観を磨くプロセスにつながっていくのだと思います。
まとめ
総じて本書は、お金の扱い方だけでなく、自分の価値観や社会との向き合い方まで含めて問い直す内容となっています。読み進めるうちに、投資とは単に金融商品を売買して利益を得る行為ではなく、自分のエネルギーをどこに流すかを選ぶ行為なのだと気づかされます。
投資を通じて、自分がどんな価値観で生きていきたいのか、どの未来を選び取りたいのかを考えるきっかけを与えてくれる一冊です。


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