こんにちは!むーです。
投資をしていると誰もが直面するのが「暴落」です。株式100%で運用していると、大きな下落に巻き込まれ、元の水準に戻るまで長い年月を待たなければならないことがあります。
しかし、ポートフォリオに債券を組み入れることで「暴落時の下落幅を抑え、回復を早める」効果があるのをご存じでしょうか?
本記事では、なぜ債券を組み入れると回復が早まるのかという理論と、リーマンショック時の具体例を交えてわかりやすく解説します。
なぜポートフォリオに債券を組み入れると回復が早いのか?
投資の世界では「リターンはリスクの裏返し」とよく言われます。株式100%で運用すれば長期的には大きなリターンを期待できますが、その代償として暴落時には資産が大きく減ってしまいます。では、なぜ債券を加えると回復が早まるのでしょうか?
1. 下落率が小さいと必要な回復率も小さい
暴落からの回復を考えるときに重要なのが「下落率」と「必要な回復率」の関係です。
たとえば資産が -50%下落 すると、元に戻すには +100% の上昇が必要です。
一方、債券を組み入れて下落を -25% に抑えられれば、必要な回復率は +33% で済みます。
つまり、下落幅が浅ければ浅いほど「元の水準に戻るハードルが低くなる」というわけです。
2. 債券の安定性が全体の底を支える
株式市場が大きく下がる局面では、安全資産として債券が買われるケースが多くあります。債券価格が安定あるいは上昇することで、ポートフォリオ全体の資産額が守られます。
株式だけなら資産が半分近くまで減るところを、債券がクッションとなることで「底打ちが浅くなる」効果があるのです。
3. リバランス効果で安値の株を仕込める
株式が急落すると、株の比率が下がり、債券の比率が相対的に高まります。このとき、債券を売って株式を買い増す「リバランス」を行えば、安値で株を仕込むことができます。
その後、株価が回復したときに大きな伸びを取り込めるため、結果的に資産全体の回復が早まります。
4. 心理的に耐えやすい
投資は「数字の世界」であると同時に「心理の世界」でもあります。株式100%で資産が半減すれば、多くの人が恐怖心から投資をやめたくなります。しかし債券を組み入れることで下落幅が小さくなれば、精神的な余裕が生まれ、投資を続けやすくなります。結果として、回復局面のリターンをしっかり享受できるのです。

つまり、「下落を浅くする → 必要な回復率が小さくなる → リバランスで効率よく戻る → 継続できる」。この連鎖が、債券を含めたポートフォリオの回復を早める理由です。
大きく下落すると元の価格に戻るのは容易ではない
株式や投資信託などの価格が大きく下落してしまうと、元に戻るまでには下落率以上の上昇が必要になります。
例えば、株価1万円の株式が7,000円になれば、下落率は30%です。しかし、7,000円が30%上昇しても、7,000円×1.3=9,100円にしかならず、1万円には届きません。
1万円に戻るための上昇率は、約43%です。
この数字は、以下の計算式で求められます。
(1万円 ÷ 7,000円-1)× 100 ≒ 43%
より大きな値下がりで株価1万円の株式が2,000円になった場合は、下落率が80%となり、1万円に戻るのに必要な上昇率は400%となります。つまり、下落幅が大きくなるほど、元の価格に戻るには大きな上昇率が必要になるのです。
リーマンショック時の具体例で効果を確認
先ほどは債券を組み入れると暴落時に下落幅が小さくなると説明しましたが、実際にどのくらい違うのかイメージしづらいものです。そこで、myINDEXでリーマンショック期間をシミュレーションしてみました。
株式のみ(S&P500)の場合
- 暴落率:約 -46.6%
- 元の水準に回復するまで:およそ 5年程度
株式100%だと、資産はほぼ半分にまで落ち込みます。暴落後は回復に時間がかかるため、「いつ元に戻るのか分からない不安」に直面することになります。資金の取り崩しが必要な人や、投資を続ける心理的余力が少ない人にはリスクが大きい状態です。
株式70%+債券30%のポートフォリオの場合
- 暴落率:約 -38.8%
- 元の水準に回復するまで:およそ 3年程度
債券を組み入れることで、株式の大幅下落をクッションできるため、資産全体の減少は抑えられます。さらに、暴落局面で株式を安値で買い増すリバランスを行えば、回復速度がさらに高まります。実際、試算では株式のみよりも約2年早く元の水準に回復できることが確認できました。
投資対象 | 暴落率 | 回復期間 | ポイント |
---|---|---|---|
株式のみ(S&P500) | -46.6% | 約5年 | 資産半減、回復に時間がかかる |
株70%+債券30% | -38.8% | 約3年 | 下落を抑え、早期に資産回復可能 |
この具体例からわかるのは、債券をポートフォリオに組み入れることで、単に下落を和らげるだけではなく、資産全体の回復速度を高め、長期的に投資を続けやすくなるという点です。まず、下落幅が小さいことは、元の水準に戻るまでの時間を短くする効果があります。債券を組み入れることで、資産が急激に減るのを緩やかにできるのです。
さらに、リバランスの効果によって、株式が大きく下がったタイミングで安く買い増すことができ、回復局面で効率的に利益を取り込むことができます。また、暴落時の心理的負担も軽減されます。資産が半分に減ると焦ってしまいがちですが、下落幅を抑えられれば投資を続けやすくなり、結果として長期的な資産形成に有利に働きます。

理論で説明した「下落率の小ささ」「債券の安定性」「リバランス効果」が、まさに現実の市場で効いた結果といえます。
まとめ
株式100%の運用は理論上、長期リターンが最も高くなる傾向があります。しかし、暴落時には資産が大きく減り、回復までに長い時間がかかるため、精神的にも資金的にも負担が大きくなります。一方、株式に債券を組み入れたポートフォリオでは、債券の安定性が下落幅を抑え、リバランスによって株式を安値で買い増すことができるため、全体の回復が早まります。
結果として、株式100%よりもリスクを抑えつつ効率的に資産を増やせる可能性があります。リターンの最大化を狙うか、暴落耐性と回復の速さを重視するかは投資目的や資金計画次第ですが、多くの投資家にとっては債券を組み入れたバランス型ポートフォリオの方が現実的で安心できる選択肢と言えます。
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