「iDeCoは節税になる」とよく聞くけれど、実際にどのくらいお得なのか、具体的な金額がイメージできない人は多いのではないでしょうか。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が全額所得控除の対象となり、さらに運用益が非課税という強力な税制優遇制度です。しかし「自分の年収だといくら節税できるの?」「20年続けたらどれくらいのメリットになるの?」という疑問を持つ人は少なくありません。
そこで本記事では、
- iDeCoの基本的な税制メリット
- 年収別の節税シミュレーション
- 20年間積み立てた場合の節税効果
を具体的な数字を使って解説します。
この記事を読めば、iDeCoを始めたときのメリットがイメージでき、自分にとって本当にお得かどうか判断できるはずです。
iDeCoの税制メリットとは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)が注目される最大の理由は、他の金融商品にはない「強力な税制メリット」があるからです。大きく分けると次の3つが挙げられます。
1. 掛金が全額所得控除になる
iDeCoで積み立てた掛金は、その全額が所得控除の対象となります。
例えば会社員で年収600万円、毎月23,000円(年間27.6万円)を拠出した場合、その27.6万円が課税所得から差し引かれます。
課税所得が減ることで、所得税(5〜45%)と住民税(10%)の負担が軽くなる仕組みです。年収が高い人ほど税率も高いため、節税効果はさらに大きくなります。
2. 運用益が非課税
通常の株式投資や投資信託では、利益に対して20.315%(所得税+住民税+復興特別所得税)が課税されます。
しかしiDeCoの口座で得られた運用益には、この税金が一切かかりません。
例えば20年間の運用で100万円の利益が出た場合、通常の口座なら約20万円の税金がかかりますが、iDeCoならまるごと100万円が手元に残ることになります。
3. 受け取り時にも控除がある
iDeCoの資産は、60歳以降に「年金」または「一時金」として受け取ります。このときも税制上の優遇が用意されています。
- 一時金として受け取る場合:退職所得控除が適用
- 年金として受け取る場合:公的年金等控除が適用
年収別 iDeCoの節税シミュレーション
前提条件は以下の通りとしました。
- 会社員(課税所得は給与所得控除後で想定)
- 月額掛金:23,000円(年間27.6万円、会社員の上限額)
- 所得税+住民税を合算して計算
年収(目安) | 所得税率 | 年間掛金 | 年間の節税額 | 20年間の節税総額 |
---|---|---|---|---|
400万円 | 20%(所得税10%+住民税10%) | 27.6万円 | 約55,000円 | 約110万円 |
600万円 | 30%(所得税20%+住民税10%) | 27.6万円 | 約82,000円 | 約164万円 |
800万円 | 40%(所得税30%+住民税10%) | 27.6万円 | 約110,000円 | 約220万円 |
iDeCoの節税効果は、年収が高いほど大きくなるのが特徴です。年収400万円クラスでも年間約5万5,000円、20年間で約110万円の節税効果が期待できますが、年収600万円や800万円になるとそれぞれ約16万円、22万円前後の節税が可能です。つまり、所得税率が高い人ほど、掛金をiDeCoに回すメリットは大きくなります。
さらに注目したいのは、長期で積み立てた場合のトータル効果です。20年間継続すると、節税額だけで100万円〜200万円を超える規模になり、さらにiDeCo口座内で得られる運用益は非課税です。これにより、普通の投資口座で運用した場合と比べ、税金分が丸ごと手元に残る点が大きな魅力となります。
20年間積み立てた場合のシミュレーション
iDeCoは長期で積み立てるほど、節税メリットと運用益の非課税効果が大きくなります。ここでは、年収600万円の会社員が月額23,000円を20年間積み立てた場合を例にシミュレーションしてみましょう。
- 年間掛金:23,000円 × 12か月 = 27.6万円
- 20年間の掛金総額:27.6万円 × 20年 = 552万円
- 年間節税額:約8.2万円
- 20年間の節税総額:8.2万円 × 20年 = 約164万円
さらに、iDeCo口座内で運用した場合、運用益が非課税になるため、例えば年利2%で運用した場合の運用益累計は約65万円(複利計算)となり、節税額と合わせるとトータルのメリットは約230万円となります。

iDeCoは「節税効果」と「運用益非課税」の2つのメリットが複合的に働くため、長期で積み立てるほど資産形成効果が高まることがわかります。
iDeCoのデメリット・注意点
iDeCoは節税や資産形成に大きなメリットがありますが、同時にいくつかの注意点もあります。始める前にしっかり理解しておくことが重要です。
1. 原則60歳まで引き出せない
iDeCoで積み立てた資産は、60歳になるまで原則として引き出せません。
そのため、急な出費や生活資金としてすぐ使いたいお金をiDeCoに回すのは適していません。短期的な資金ニーズがある場合は、別途現金や普通の投資口座での資産管理が必要です。
2. 手数料がかかる
iDeCoは金融機関を通して利用するため、口座管理手数料や運用管理手数料が発生します。
- 加入時手数料:2,829円(初回のみ)
- 口座管理手数料:月額171円〜(金融機関による)
長期で積み立てると数万円〜数十万円のコストになることもあるため、手数料の安い金融機関を選ぶことが重要です。
3. 掛金上限が職業によって異なる
iDeCoの月額掛金は、職業や加入状況によって上限が異なります。
- 会社員(企業年金なし):月23,000円
- 会社員(企業型DC加入):月12,000円
- 自営業者:月68,000円
上限以上の掛金は控除対象にならないため、自分の職業や年金制度に応じた掛金設定が必要です。

これらのデメリットを理解した上で活用すれば、iDeCoは節税+資産形成のツールとして有効です。
まとめ
iDeCoは、掛金の所得控除・運用益の非課税・受取時控除というトリプルの税制メリットが魅力の制度です。年収が高いほど節税効果は大きく、長期積立を行うことで数百万円規模のメリットを得ることも可能です。
一方で、原則60歳まで引き出せないことや、金融機関の手数料、職業による掛金上限といった注意点もあります。これらを理解したうえで活用することで、iDeCoは節税しながら老後資金を効率的に準備できるツールになります。
コメント