日本株で安定した配当収入を狙う投資家に注目されているのが、日経累進高配当株指数です。本指数は、長期にわたり減配せず累進的に配当を維持・増加している銘柄の中から、配当利回りの高い企業を選定して構成されています。単なる高配当株ではなく、企業の安定したキャッシュフローと株主還元姿勢を重視しており、長期的なインカムゲインを重視する投資戦略のベンチマークとして最適です。
この記事では、「日経累進高配当指数」の特徴とパフォーマンスを分析し、インデックス投資と組み合わせることで得られる効果について考察します。
日経累進高配当指数とは
日経累進高配当株指数は、日本経済新聞社が算出・公表する株価指数で、長期的に減配せず累進的に配当を維持・増加している銘柄の中から、配当利回りの高い銘柄を選定して構成する指数です。累進配当(増配または前年と同水準の配当を継続)の実績がある企業の収益力と株主還元姿勢を評価し、高配当株投資のベンチマークとして設計されています。
基本情報
- 銘柄入れ替え:年1回(6月)
- 銘柄数:30
- ウェート:時価総額
- 算出開始日:2023年6月30日(2010年6月30日まで遡及算出)
- 基準日:2010年6月30日=10,000ポイント
選定基準
日経累進高配当指数に採用される銘柄は、以下の条件を満たす企業です。
- 累進配当を10年以上継続
配当を減らさず、毎年増配するか前年度と同水準を維持していること(累進的配当の継続実績)。 - 上場市場
東京証券取引所(TOKYO PRO Market除く)に上場している普通株式。 - 配当利回り
予想ベースの配当利回りが高い銘柄を上位から採用。
これらの条件を満たす銘柄の中から、日本経済新聞社が定期的に見直しを行い、構成銘柄を決定します。
指数の特徴
累進配当重視
長期的に減配せず、配当を維持または増やしてきた企業に着目する点が特徴です。配当利回りの高さも考慮するため、単純な高配当株指数とは異なる選定ロジックになります。
高配当性と安定性の両立
配当利回りが高く、かつ減配リスクが低い企業を集めているため、インカム重視の投資家にとって注目度が高い指数です。
ポートフォリオへの活用
高配当戦略のベンチマークとして使われるほか、安定した配当収入の獲得を重視する投資戦略に適しています。
指数のパフォーマンス

累積リターン(年率)%
| 1年 | 3年 | 5年 | |
| 日経連続増配株指数 | 34.75 | 34.80 | 31.00 |
| 日経平均 | 34.10 | 23.96 | 15.93 |
直近のパフォーマンスを見ると、日経累進高配当株指数は日経平均に比べてリターンが高く、かつ値動き(標準偏差)が低めで推移していることがわかります。特に3年・5年の期間で累積リターンが日経平均を上回る一方、変動性は抑えられており、高配当と安定性を兼ね備えた銘柄群の強みが表れています。
この傾向は、景気変動に左右されにくい安定配当株が多く組み入れられていることに起因しており、長期的なインカム重視のポートフォリオにおけるリスク分散効果も期待できることを示しています。
ファンダメンタルズ
| 配当利回り% | PER | PBR | ROE% | |
| 日経連続増配株指数 | 3.88 | 13.87 | 1.04 | 7.50 |
| 日経平均 | 1.60 | 23.51 | 2.35 | 9.99 |
日経累進高配当株指数は、配当利回りが3.88%と日経平均の約2倍以上であり、高いインカム獲得力を示しています。一方でPERは13.87と日経平均より割安で、PBRも1.04と株価がほぼ帳簿価値に近い水準にあります。ROEは7.5%と日経平均の9.99%よりやや低いものの、総じて割安かつ安定した収益力を持つ企業が多く、株主還元を重視する投資家に適した銘柄群であることが読み取れます。
構成銘柄一覧
2025年10月31日現在の日経連続増配株指数の構成銘柄をリスト化しています。
日経累進高配当株指数は、安定的な配当・増配を特徴とする銘柄で構成されており、個別企業のキャッシュフローの安定性や株主還元姿勢が重視されています。
しかし、構成銘柄を見ると、典型的なディフェンシブ株(医薬品、保険、素材系など)は約3分の1に過ぎず、残りの約3分の2は建設、石油、銀行、小売など景気変動の影響を受けやすい業種です。そのため、この指数は「増配・配当の安定性」という面では優れるものの、景気敏感度は日経平均と比べて大きく変わらない場合があることに留意する必要があります。
建設
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 1719 | 安藤ハザマ | (株)安藤・間 |
| 1870 | 矢作建 | 矢作建設工業(株) |
| 1928 | 積ハウス | 積水ハウス(株) |
パルプ・紙
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 3861 | 王子HD | 王子ホールディングス(株) |
化学
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 4041 | 日曹達 | 日本曹達(株) |
| 4042 | 東ソー | 東ソー(株) |
| 4182 | 菱ガス化 | 三菱瓦斯化学(株) |
| 4183 | 三井化学 | 三井化学(株) |
| 4205 | ゼオン | 日本ゼオン(株) |
| 4208 | UBE | UBE(株) |
| 4272 | 日化薬 | 日本化薬(株) |
医薬品
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 4502 | 武田 | 武田薬品工業(株) |
| 4503 | アステラス | アステラス製薬(株) |
| 4521 | 科研薬 | 科研製薬(株) |
| 4528 | 小野薬 | 小野薬品工業(株) |
石油
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 5020 | ENEOS | ENEOSホールディングス(株) |
窯業
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 5201 | AGC | AGC(株) |
非鉄・金属
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 3431 | 宮地エンジ | 宮地エンジニアリンググループ(株) |
| 5938 | LIXIL | (株)LIXIL |
自動車
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 7313 | TSテック | テイ・エス テック(株) |
その他製造
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 7956 | ピジョン | ピジョン(株) |
商社
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 8130 | サンゲツ | (株)サンゲツ |
小売業
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 8252 | 丸井G | (株)丸井グループ |
銀行
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 8309 | 三井住友トラ | 三井住友トラストグループ(株) |
その他金融
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 8439 | 東京センチュ | 東京センチュリー(株) |
| 8473 | SBI | SBIホールディングス(株) |
| 8593 | 三菱HCキャ | 三菱HCキャピタル(株) |
保険
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 8725 | MS&AD | MS&ADインシュアランスグループホールディングス(株) |
不動産
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 3291 | 飯田GHD | 飯田グループホールディングス(株) |
倉庫
| コード | 銘柄名 | 社名 |
|---|---|---|
| 9364 | 上組 | (株)上組 |
私の投資スタンスと増配株への投資方法
ポートフォリオ
私は資産形成の中心をインデックス投資に置いています。
米国や全世界の株式インデックスを長期で積み立てることで、時間を味方にしたシンプルな運用を基本としています。
そのうえで、ポートフォリオのサテライトとして、日本の連続増配株を個別に保有しています。
狙いは「配当による安定収入」と「株主還元姿勢の高い企業を持つ安心感」です。
個別株の評価方法
日経累進高配当指数の構成銘柄だと言って闇雲に投資するのは得策ではありません。筆者は企業が「増配し続けられるか」や「減配しないか」を重視して投資判断しています。
具体的には、
- 財務が健全であること(自己資本比率が高い・有利子負債が少ないなど)
- 累進配当銘柄(連続増配含む)で利回りが3%前後あること
を基準にしています。
たとえばENEOSや三菱HCキャピタルといった企業は、配当の安定性と企業体質の両面で信頼できる存在で、私も保有しています。
日経累進高配当指数は、まさにこのような企業群で構成されており、「堅実に長く持てる日本株」を探す際の目安として活用しています。ただし、利回りが高い場合は相対的に業績(株価)が軟調である可能性があるため、投資の際には必ず財務指標を確認してください。
まとめ
日経累進高配当株指数は、株価上昇の面では日経平均に劣る場合がありますが、利回りや配当の安定性、財務健全性を重視すると下値リスクが抑えられ、長期投資に向いています。指数の性格としては「堅実に持てる日本株の集合体」と言えるでしょう。





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