こんにちは!むーです。
私が個別株投資で重視しているのは、「長期で安心して保有できる個別株」と「安定的に配当が増える銘柄」です。
花王(4452)は日用品市場の安定性と34年連続増配という実績から、FIREを目指す個人投資家にとって魅力的な投資対象です。本記事では、花王の株価指標やフリーキャッシュフローなどの財務データをもとに、長期投資家として押さえておきたいポイントやリスク・注意点までを丁寧に解説します。
花王の基本情報
花王は家庭用製品(洗剤、紙製品)、化粧品、健康関連製品を手掛ける、日本を代表する生活必需品メーカーです。
国内では家庭用製品を中心に圧倒的なシェアを誇り、化粧品や健康関連製品も順調に成長しています。海外でも事業を展開しており、特に東南アジアでは存在感を高めています。
競合にはP&Gやユニリーバがありますが、花王は国内市場でブランド力と信頼性を武器に安定した地位を築いています。
花王(4452)の投資指標レビュー(2025年8月時点)
データはIR BANKから引用しています。
PER・PBR

花王のPERは過去10年で概ね20〜30倍前後で安定しており、2023年の61倍は一時的な例外です。日本株としてはやや高めですが、利益やキャッシュフローの安定を考慮すると長期投資では過度に割高とは言えません。
PBRは近年2.5〜2.8倍で推移しており、株価が純資産に対して過度に高くないことが分かります。現在割安と言える水準ではありませんが、安定した配当を狙う長期投資先としては妥当だと判断します。
自己資本比率

花王の自己資本比率は過去10年で50%前後で推移しており、業界水準と比較しても高水準です。これは企業が借入に過度に依存せず、内部留保で事業を支えていることを示しており、景気変動や業績の一時的な悪化に対する耐性が高いことを意味します。この自己資本比率の高さが配当維持の安全性に直結すると言えるでしょう。
特に、花王のような消費財企業は景気の影響を受けにくいとはいえ、為替や原材料価格の変動などで利益が変動することがあります。その中で自己資本比率が50%以上あることは、利益が一時的に落ち込んでも財務的に余力があり、配当や増配を安定的に維持できる可能性が高いという強みになります。投資家にとっては、長期的に安心して株式を保有できるポイントの一つです。
負債比率

花王の有利子負債比率は過去10年で概ね20〜30%前後で推移しており、長期投資で高配当・連続増配株を選ぶうえでは安全圏といえます。これは企業が借入に過度に依存していないことを示しており、利息負担や借入返済の圧迫を受けにくいため、業績が一時的に落ち込んでも配当を維持しやすい状態です。特に製造業や消費財業界の企業において、この水準は財務の健全性を示す良い指標となります。
一方で、2019年には一時的に有利子負債比率が33.61%まで上昇していますが、それでも自己資本比率が50%前後であることから、財務基盤は十分に安定しています。長期的には低い負債比率を維持することで、景気変動や原材料価格の変動など外部要因による業績の揺れに耐え、配当の安定性を確保できる点が投資家にとって安心材料となります。
配当性向

花王の配当性向は過去10年で30〜60%前後で推移しており、長期的には比較的安定しています。この水準は、利益の中から適度に株主還元が行われていることを示しており、過度に利益を配当に回していないため、業績変動時でも配当を維持しやすい状態にあります。特に2015〜2019年は配当性向が40%前後で推移しており、増配余力も十分に確保されていた期間です。
2023年は当期純利益が減少する一方で、年間配当金を2円増配して1株当たり150円としたため、配当性向が一時的に158.9%まで急上昇しました。これは、花王が掲げる「安定的・継続的な配当」の方針に基づき、フリーキャッシュフロー等を考慮して株主還元を維持する戦略的判断によるものです。連続増配は1991年以降続いており、この年の高配当性向も、連続増配記録を途切れさせないための例外的なケースとして理解できます。
フリーキャッシュフロー(FCF)

花王のFCFは過去10年でプラスを維持しており、年度ごとの変動はあるものの長期的には安定しています。特に2019年以降は1,000億円前後で推移しており、配当や増配を支えるキャッシュの余力が確保されていることが確認できます。
全体として、花王は一時的な業績変動があっても、長期的には安定したフリーキャッシュフローを維持している企業と評価できます。この点から、配当の継続性や増配余力に関して安心感を持てる銘柄であると言えます。
増配率

直近10年の配当実績から増配率を計算してグラフにしました。
年度 | 配当実績 | 増配率 |
---|---|---|
2015 | 80 | 14.3% |
2016 | 94 | 17.5% |
2017 | 110 | 17.0% |
2018 | 120 | 9.1% |
2019 | 130 | 8.3% |
2020 | 140 | 7.7% |
2021 | 144 | 2.9% |
2022 | 148 | 2.8% |
2023 | 150 | 1.4% |
2024 | 152 | 1.3% |
花王の増配率は長期的に見ると徐々に鈍化している傾向が確認できます。初期の頃は17%前後の高い増配率を記録していましたが、その後は10%前後、さらに直近では1〜3%程度に落ち着いています。これは、企業規模の拡大や利益の安定化に伴い、配当金の増加幅が相対的に小さくなったことを示しています。
それでも、直近10年以上にわたり毎年増配を続けており、連続増配の実績は1991年以降途切れていません。増配率の低下はあるものの、安定的に配当を増やし続ける姿勢が維持されており、長期投資家にとっては将来のインカムゲインの予測において安心できる要素と言えます。
配当利回り

花王の配当利回りは過去10年で概ね1.4%〜2.8%の範囲で推移しています。日本株全体の平均配当利回りが約2%前後、高配当株が3%以上を目安とすると、花王の利回りは平均的な水準であり、高配当株とは言えません。
高配当株と比べると利回りは控えめですが、花王は連続増配株であり、過去30年以上にわたり毎年増配を継続しています。利回りはやや低めでも、安定した配当実績やフリーキャッシュフローの裏付けがあるため、減配のリスクは相対的に低く、長期的なインカムゲインを期待できる銘柄として評価できます。
総合評価
筆者が花王を保有する理由
私が花王を保有する理由は、生活必需品×連続増配という長期投資との相性の良さです。
生活必需品を扱う安定した事業基盤
花王を長期保有する最大の理由は、生活必需品を扱う安定した事業基盤にあります。化粧品、スキンケア、ヘアケア、洗剤、紙おむつといった分野は景気変動に左右されにくく、需要が比較的安定していることから、不況局面でも売上が大きく落ち込みにくい特徴があります。

アタック、ビオレ、キュレル、メリーズなど、生活に密着した製品群は景気に左右されにくいです。
34年連続の増配実績(2024年時点)は、日本企業の中でもトップクラス
花王は34年連続増配という実績を誇り、日本株の中でも数少ない「配当貴族」に相当する銘柄です。これは、単に利益を出しているだけでなく、株主還元を経営方針の軸として長期にわたり継続してきた証拠であり、投資家にとって大きな安心材料となります。

財務面でも、自己資本比率が50%前後と健全で、有利子負債も少なく、キャッシュフローの安定性が高い点は魅力的です。短期的な業績の上下はあるものの、研究開発に毎年数百億円を投じて新商品を生み出し続ける力があり、ブランド力の維持・拡大が可能な企業です。
さらに、花王はESG評価でも高い評価を受けており、環境対応やサステナビリティを重視する点も長期投資家にとってプラスに働きます。世界的な機関投資家が投資対象としやすいことから、需給面の下支えも期待できます。

もちろん、短期的には化粧品事業の不振や円安の影響などで業績が停滞する局面もあります。しかし、生活必需品メーカーとしての底堅さと、配当を増やし続ける企業文化を背景に、「長期的に報われる銘柄」として保有する理由が十分にあるといえます。
花王の懸念点
低成長に直面している国内市場依存
日本の人口減少・高齢化に伴い、日用品需要が横ばいまたは縮小傾向にあります。海外展開を進めているものの、売上の約5割は依然として国内市場に依存しており、成長ドライバーの不足が課題です。
円高リスクと海外事業の競争
海外売上比率は年々上昇しているため、為替変動による影響が利益に直結します。特に欧米やアジア市場では、ユニリーバやP&Gといった巨大グローバル企業との競争が激しく、ブランド力・価格競争力の維持が不可欠です。
利益率の低下傾向
原材料価格(パーム油、紙、化学品)の高騰や物流コストの上昇により、営業利益率が以前より低下しています。値上げで吸収しきれない場合、利益の圧迫が続きます。
総合評価:80点/100点
安定した財務体質と長期連続増配の実績が魅力。利回りは控えめだが、守りの銘柄として長期投資家に安心感を与える点が好印象。株価の下落時に積極的に仕込みたい。